梅雨

毎月一回の書の稽古。

梅雨、と聞いて思いついた字を書く。
まずは一言、それからまた一言。

半紙に一つ一つと現れる字、それ以前に身体の中に線がたつ。必ずしも線とは限らない。一つの点、曲線あるいは面、丸。

一つの線から記憶が一つ。
どこかうろ覚えな淡い思い出。

あれはどこかの山の中で見た風に揺れる涼しげな山林、それが淡淡と消えて半紙の上にはいくつもの直線、それと構成された一つの形(字)。

次々と現れては消え、また現れる記憶の形。懐かしさを伴って遡る記憶の断片
半紙に記された字は生きた形。

連想から、または空想、その人の生きた記憶から一つずつ懐かしさを伴い、丁寧に織りなされて浮かび上がる生きた形。

雨、水、山、雷、川遊びに蛙、縁側
寺町の幽霊屋敷、学校の帰り道に覗いた戸水屋の葛饅頭。親父に連れられていったブラジル屋のコーヒー豆の香り。

身体に眠っていた記憶がありありと甦ってくる。そこは六畳の畳み部屋ではもうなかった。時間を越えた場であった。

なんと贅沢な時間であろうか。

よき旅であった。




コメント

このブログの人気の投稿

あたわりもの

before after vol.7 蜂の巣とコーキング

新年一月・二月の予定